久里浜医療センター

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インターネット嗜癖(依存)について

1. 嗜癖とは何を意味するのでしょうか?

ある習慣が行き過ぎてしまい、その行動をコントロールするのが難しいまでになった状況です。その行き過ぎた行動のために、さまざまな健康問題や社会的問題をひきおこすことがあります。たとえば、ギャンブル嗜癖、買い物嗜癖、セックス嗜癖などがこれに該当します。

よく似た用語に依存があります。依存は嗜癖の一部で、嗜癖のなかで特に習慣の対象が何らかの物質の場合を指します。たとえば、アルコール依存、ニコチン依存、覚せい剤依存などです。嗜癖は依存とよく混同されて使われています。むしろ、ギャンブル依存、買い物依存のように、使われる方が一般的かもしれませんが、これは間違った使い方です。
なお、本ホームページでも、インターネット嗜癖より、インターネット依存またはネット依存の方が一般的なことから、そのようにあえて呼ぶ場合もあります。

2. インターネット嗜癖とはどのようなものなのでしょうか?

わが国でも、すでにインターネットは生活の中になくてはならない、便利で身近なものになっています。この身近なツールであるインターネットに嗜癖を起こすというようなことはありうるのでしょうか?また、どのような状態になったらインターネットに嗜癖しているというのでしょうか?

インターネット嗜癖の一致した定義はまだ見られていませんが、キンバリー・ヤング(Kimberly S. Young, 1998)によれば「インターネットに過度に没入してしまうあまり、コンピューターや携帯が使用できないと何らかの情緒的苛立ちを感じること、また実生活における人間関係を煩わしく感じたり、通常の対人関係や日常生活の心身状態に弊害が生じているにも関わらず、インターネットに精神的に嗜癖してしまう状態」と定義しています。実際に毎日のように10時間以上アクセスし、インターネットが原因で、家族や友人との関係に亀裂を生じたり、仕事や学校の勉強に支障をきたしているにもかかわらず、やめることができない人もいます。インターネットは便利で役立つすばらしいツールですが、行き過ぎた使用のために、健康問題や社会的問題を起こしうるまでになるのです。

3. インターネット嗜癖者はどのくらいいるのでしょうか?

中国ではインターネット嗜癖の青少年が1300万人以上に上り、治療施設も300を超えているといいます。また韓国では、2011年5月の政府の発表によると、小学4年生、中学1年生、高校1年生を対象とした全国調査では、その4.94%にあたる89,755人にネット嗜癖の危険性が見られたとのことです。

我々が2008年に実施した、成人人口から層化2段無作為抽出方法によって抽出した男女7500名を対象とした調査から、わが国成人のネット嗜癖傾向者は合計270万人におよぶと推計されました。インターネット嗜癖は若者に増加していると推察されることから、調査対象を20歳以下にひろげればもっと多くの嗜癖者が存在すると思われます。

4. インターネット嗜癖といってもそのタイプはさまざまです

インターネット嗜癖にはさまざまな類型が考えられていますが、インターネットに嗜癖する背景にある心理に注目した類型の代表的なものを3つ示します。

1つは既出のヤングら(Young et al. 2000)によるもので、@サイバーセックス依存(Cybersexual addiction):サイバーセックスやサイバーポルノのためにアダルト・ウェブサイトを強迫的に使う、A人間関係依存(Cyber-relational addiction):オンラインの人間関係にのめりこみすぎる、Bネット強迫(Net compulsions):とりつかれたようにオンライン・ギャンブル、オンライン・ショッピング、オンライン取引にのめり込む、C情報収集過剰(Information overload):強迫的なネットサーフィンやデータベース検索、Dコンピューター依存(Computer addiction):強迫的なコンピューターゲームの使用、の5型に分けられています。
また、日本の研究者である大野ら(http://www.iii.u-tokyo.ac.jp, 2011年5月閲覧)は、21人のネット依存者へのインタビュー調査から、利用するサービスによって@リアルタイム型チャット依存:チャットやオンラインゲームなど、利用者同士がリアルタイムにコミュニケーションを行うことを前提としたウェブサービスへの依存、Aメッセージ型ネット依存:ブログ・BBS・SNSへの書き込みやメール交換など、利用者同士がメッセージを交換しあうウェブサービスへの依存、Bコンテンツ型ネット依存:ネット上の記事や動画などのコンテンツなど、受信のみで成立する一方向サービスへの依存、に分類できるのではないかと推論しています。さらに、韓国においてインターネット嗜癖(主にオンラインゲーム嗜癖)治療に10年以上にわたり携わるキム教授(Hyun-Soo Kim)は表に示すような類型をこころみています。あなたはどれかにあてはまりますか?

表. オンラインゲーム嗜癖の類型
動機づけによる分類 ストレス解消
達成感を得るために
冒険を求めて
人とのコミュニケーションを求めて
報酬に関する分類 喜びを得たい
人間関係を得たい(友達をつくりたい)
お金を得たい
社会的な地位を得たい(アイデンティティ)

5. インターネット嗜癖はどのように治療するのでしょうか?

インターネット嗜癖そのものには確立された治療法はありません。また、重症の嗜癖の場合には、背景に躁鬱病や発達障害といった精神疾患がある場合や、実生活において人間関係上や経済上深刻な問題を抱えており、そこからの逃避の場合もあります。

ヤングは、その著書「Caught in the Net」(1998)の中でインターネット嗜癖からの回復のために必要なこととして@自分が失いつつあるものを知る: インターネットで費やす時間のために、切り詰めたり、削ったりしていることがらを書き出しランク付けする。Aオンラインにいる時間を計る: 自分がどれだけの時間をこの習慣に費やしているかを明確に知るために、実際に使った時間の記録をつける。B時間管理法を使う: 代わりにできる活動を見つける、自分の利用パターンを見きわめ、その反対のことをする、外部からの防止策をさがす、計画的なインターネットの利用時間を予定表に書き込む。C実生活のなかで支援を見出す: 支援グループを探す D自分が嗜癖になったきっかけを探す、 などをあげています。
韓国では政府が、K-scaleという独自のインターネット嗜癖スクリーニングのためのスケールを思春期の子どもたちに実施して、インターネット嗜癖の危険性の高い子どもたちを同定し、心理相談施設におけるカウンセリングやインターネット以外の楽しみを見つけられるような活動探し、治療キャンプなどが行われ、重症の嗜癖の場合には医療機関による薬物療法や認知行動療法、家族療法などが行われます。

(文責 三原聡子)

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