久里浜医療センター

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小児排便障害治療への取り組み

夏休み期間の小児外来を増枠いたします。
普段病院にかかりにくい便秘やIBSで悩んでいるお子様をお待ちしております。


 欧州小児消化器病学会European Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition (ESPGHAN)のFull Memberとして承認されました。 これまで小児期発症の成人便秘患者治療を原点に小児期便秘・IBS治療を行っておりますが、画像を用いた小児期便秘・IBSの診断と治療を世界に発信いたします。

 第120回日本小児科学会学術集会 4月14日ー16日品川 「当院小児過敏性腸症候群(IBS)患者の病態と刺激性下剤の症状への影響」 を発表しました。

 IBSは思春期に発症する病気とされていますが、小児の便秘型IBSは思春期前の発症が 多く、 その原因として 「幼児に多い直腸性便秘に刺激性下剤が連用されたことで腹痛を起こしていた」 ことを発見して発表しました。
幼児の直腸性便秘は浣腸で直腸をリセットして排便習慣をつけることで比較的容易に 治ります。
浣腸を回避する目的で刺激性下剤が使われることのリスクを報告しました。

 最近は全国から小児の排便障害患者さんがいらっしゃるようになりました。

 当院ではこれまでIBSや便秘などの排便障害を無麻酔大腸内視鏡やCTコロノグラフィーで病態を分析して、病態に応じた治療を行ってきました。
多くの症例を経験して分析することにより、症状発現の契機となるストレスの「心当たり」を聴取することで病態にストレスが関連するか高い確度で診断可能となり、内視鏡やCTを行わなくても腹部X線画像を読影することで腸管形態を推測することが可能となりました。

 下痢型IBSなどのストレス関連の腸管運動異常には病態認識によるバイオフィードバックを含めた認知療法を用いることでラモセトロンやタンドスピロンなどの内服治療の効果を著しく高めることが可能です。
ガスで悩む子供にストレスで生唾を呑みこむときに空気も呑みこんでしまう呑気症が多く、認知療法が有効なこともわかってきました。
 混合型や便秘型IBSに多い腸管形態異常には小児では保険適応になるオリゴ糖を用いた便性状のコントロールと腹部X線で推測された腸管形態に応じたエクササイズや腹部マッサージの指導で良好な結果を得られるようになりました。

 これまで数々の学会や論文で報告しておりますが、成人の重度の排便障害の多くは生まれつきの体質のようです。当病院HPの「患者様の治療体験記」で確認していただけますが、体験談を寄せていただいた方は全員幼少時から症状に悩まれていました。

重度の排便障害は生まれつきのことが多く、幼少時から悩んでいた成人の患者様を治せるのであれば病悩期間の短い小児であればより容易に治せることになります。

小児での症例の診断と治療過程を提示します。

1)下痢と腹痛で悩んで来院された中学生男子
中学校に進学したころから下痢症状と腹痛で悩むようになりました。
下痢症状が出るのは学校のみでストレスの「心当たり」があります。
前のクリニックでイリボー(ラモセトロン)を投与されましたが、下痢は収まるものの逆に便秘になって腹痛が悪化するため内服もできず困って来院されました。

おなかのX線写真を提示します。

下痢の患者さんと思えないほど便が溜まっているのと同時に、仰向けから立ち上がることで体の左に位置する下行結腸が骨盤の方に落ち込むのがわかります。
ストレスの「心当たり」があるので腸管運動異常と、下行結腸の固定不良による腸管形態異常が病態と考えました。
ラモセトロンは非常に強力で有効な薬ですが、腸管形態異常がある運動不足の状態では逆に便秘と腹痛を引き起こすことがあります。

ストレスに反応して腸が動きやすい体質であること、運動不足になると便秘になりやすい体質であることを病態として理解する認知療法を行い、エクササイズやマッサージをしながらラモセトロンを内服することで下痢や腹痛は速やかに消失し、緊張することが予測される日のみ薬を内服するだけでよくなりました。

腹部X線と問診だけで腸管運動異常と腸管形態異常の2つが病態としてあることが判明し、病態に合わせた治療で速やかに改善し、体質を克服した一例です。


2)生まれつき1週間から10日間便通がない9歳男児

排便習慣と排便姿勢の問題で直腸性便秘になっておなかは便でいっぱいになっていました。
生活習慣と排便姿勢の指導をすることで、翌日から毎日排便ができるようになり、10日後のレントゲンでは著しく便が減っていることが確認できます。

成人でも職場でのトイレの我慢や、高齢での体力の低下やおしりのトラブルでトイレから足が遠のくことで起きますが、特に乳幼児に多いのがこのタイプの直腸性便秘です。
トイレトレーニングや食事移行期、通学開始の時期に起こりやすく、「小児慢性機能性便秘症ガイドライン」で明確な診断と治療のフローチャートが提示されています。
小児で直腸性便秘になりやすいのはおしりが洋式トイレに合っていないタイプの子が多いようで、足台などを用いた排便姿勢を指導すると回復も早く再発が抑制されるようです。

 

小児は大人と違って体が小さいため腹部X線だけでも容易に腸管形態を把握できます。
病悩期間が短いこともあり認知療法が非常に有効で、生活指導に順応しやすく、スポーツを取り入れるのが容易なことから大人よりびっくりするほど回復が早いのが特徴です。
特にストレスが原因の腸管運動異常型IBSでは体質自体は変わらないのですが、体質とうまく付き合えるようになる「病気の卒業」が可能で、体質を理解することでご自身の腸とうまく付き合えるようになるようです。

お子さんの1日1日は大人の1日1日とは全く違う、非常に大切な時間です。
小児の排便障害の治療を始めるようになって、幼少時からずっと長いこと下痢や便秘、腹痛で悩まされていた成人の患者さんたちの辛かったであろう日々を思うと、この方たちを小さいころに治せていたらと心から思います。
早期に病態を把握して、ご自身の腸とうまく付き合う方法を見つけて楽しい日々を送りましょう。

便秘や過敏性腸症候群で困っているお子さんをお待ちしております。

第120回日本小児科学会学術集会 4月14日ー16日品川 「当院小児過敏性腸症候群(IBS)患者の病態と刺激性下剤の症状への影響」 を発表しました。
IBSは思春期に発症する病気とされていますが、小児の便秘型IBSは思春期前の発症が 多く、 その原因として 「幼児に多い直腸性便秘に刺激性下剤が連用されたことで腹痛を起こしていた」 ことを発見して発表しました。
幼児の直腸性便秘は浣腸で直腸をリセットして排便習慣をつけることで比較的容易に 治ります。
浣腸を回避する目的で刺激性下剤が使われることのリスクを報告しました。

10月5日から8日までカナダのモントリオールで行われた
5th WCPGHAN(World Congress of Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition) 2016で
ABDOMINAL X-RAY IMAGE AND INQUIRY SUGGEST PATHOPHYSIOLOGICAL DIFFERENCE OF
FUNCTIONAL CONSTIPATION (FC) BETWEEN ADULT AND CHILD IN JAPANを発表しました。
腹部単純写真による便秘の病態ー小児と成人の違いーについての発表で、海外の事情についても情報が得られました。

第34回日本小児心身医学会総会(長崎)で画像を活用した小児IBSの病態診断と治療 ―腸管運動異常型・腸管形態異常型―を発表しました。
これまで小児のIBSはストレス疾患ととらえられていました。
今回の発表では成人同様に下痢型の半数はストレス型だが、便秘型や混合型ではストレス以外の要因が多く、 特に腸管形態異常「ねじれ腸」の子供が骨折や運動量の低下で腹痛を伴う便秘・下痢を起こし、エクササイズで改善することを報告しました。 腸管形態異常のIBSはストレスが関係なく、お腹が痛いからと学校をお休みすると治るどころか悪化します。
問診と腹部単純写真だけでも腸管形態異常がわかり、適切な治療ができることを報告しました。

第43回日本小児栄養消化器肝臓学会(つくば)で「腹部単純写真から見た小児・成人 機能性便秘の病態 ‐発症年齢による病態の変遷‐」を発表しました。
成人の機能性便秘が腹部単純写真で@排便の我慢による直腸性便秘Aストレスによる痙攣性便秘B運動不足による腸管形態異常便秘の3つに分けるとわかりやすく、 効果的な治療が可能なことを報告してきましたが、小児に腹部単純写真による病態分類を応用して成人と比較して報告しました。
成人便秘の半数近くが小児期発症ですが、小児便秘の大部分を占める幼児の直腸性便秘が成人便秘に移行するわけではなく、 小児では少数派の痙攣性便秘や運動不足による腸管形態異常便秘が成人便秘に移行する可能性が高いことを報告しました。

第119回日本小児科学会学術講演会(札幌)で「当院小児・成人便秘患者の病態の検討−直腸肛門角異常の影響−」を発表しました。
幼児の便秘の9割は直腸性便秘でお尻の構造がその原因であること、成人の便秘には小児期発症が多いもののお尻の問題があっても直腸性便秘は少なく、小児期以降に発症した直腸性便秘以外の痙攣性便秘や腸管形態異常+運動不足が成人便秘につながると考えられることを発表しました。

初診は予約制ですので病院内科外来に電話予約をお願いいたします。
(小児の予約は極力お待たせしないようにしております)

水上健

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