久里浜医療センター

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お待たせしていた初診外来を増枠しました。 すでに予約を取られて2ヶ月以上の待ち時間がある方はご連絡いただけると短縮できる場合があります。
学業や仕事に支障が出ている方は早く診察しますのでご予約の際にお伝えください。

法研より「慢性便秘症を治す本」を出版しました。
久里浜医療センターでの診療内容につき詳しく説明しております。
ご参考にしていただけますと幸いです。詳しくはこちらをご覧ください。

「便秘」で悩まれている方へ

第104回日本消化器病学会総会
4月19日―21日新宿「腹部X線を活用した慢性便秘診療‐ガイドラインの効果的運用のために?」 腹部X線と問診で判りやすく治療ができることを報告しました。

−日本初の慢性便秘症診療ガイドラインが発刊されました−

便秘はインターネット調査では人口の28%もの方が悩まされている疾患です。
ところが驚くべきことに、これまで日本では便秘診療のガイドラインは存在しませんでした。
科学的根拠なく、経験論的に便秘診療が行われてきたのです。

2017年10月に日本消化器病学会から日本で初めての慢性便秘症診療ガイドラインが刊行されました。
水上も診断と治療セクションでガイドライン作成に参加しました。

ガイドラインで便秘は
「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」
と定義されます。

慢性便秘症の診断基準を簡単にまとめると
@ 兎糞・硬便など固い便
A 便を出にくい
B 残便感がある
C 排便回数が週3回未満
の2項目以上を満たし「6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は基準を満たしていること」
と定義されます。
腹痛の有り無しは問わず、「腹痛を伴なう便秘」である便秘型IBSを含むものとされました。

いずれにしても
「他に症状がなければ、毎日出ていなくても便秘ではない」ということが明示されました。

便秘は症状から
@排便回数減少型
A排便困難型
に分類され、

便秘の病態は
@ 大腸通過正常型:便秘型IBSなど
A 大腸通過遅延型:特発性便秘や便秘型IBS
B 便排出障害型:直腸性便秘や直腸瘤、骨盤底筋協調運動障害など
の3つに分類されます。
この分類は世界で現在使用されているもので、便秘の研究をする上では非常に重要なものです。

 肛門科を直接受診されること多いB「便排出障害型」は排便造影などが行われ、画像検査に基づいたわかりやすい治療が行われております。

 ただ、一般に便秘と言われるものの大部分を占める@Aの分類には日本で行えない検査SITZMARKS®が必要で、「大腸通過遅延型」と言われても便秘なんだから当然だろうと思われるでしょうし、「大腸通過正常型」と言われても困ってしまうと思います、もちろん治療する側としても「大腸通過遅延型」と「大腸通過正常型」で治療指針が異なるわけではないので困ってしまいます。

 便秘治療先進国のアメリカではSITZMARKS®は主に研究に用い、一般臨床では使わないとシンシナティ大学の教授は話されていました。

なかなか感覚的に理解しにくい新しい便秘の病態分類ですが、これまで我々が報告している画像検査から見た病態分類を当てはめると理解しやすくなります。

−画像検査からみた便秘の病態−「温故知新」

 以前より使われていた便秘の分類に1920年にドイツで提案されたとされる@直腸性便秘、A痙攣性便秘、B弛緩性便秘の3つに分類する方法がありました。 この分類であれば画像検査で「目で見える」ようになり、新しい便秘分類に当てはめて考えることができるようです


1. 直腸性便秘:排便の我慢で直腸の知覚と反射が減弱して便秘になる

おなかのレントゲンで直腸に大きな便の塊があるが便意はない ⇒ 「便排出障害型」の一部と考えられます


2. 痙攣性便秘・ストレスによる「便秘型IBS」:身体的・精神的ストレスで便回数が少なくなるタイプで「旅行中出ないが帰ると出る」「平日は出ないが休日出る」のが特徴。便秘期間に比しておなかが張らず、1‐2ヶ月に1回という人もいます。おなかの痛みを感じる方もいます

おなかのレントゲンでは竹の節状の腸の痙攣と兎糞状の便が見られます。内視鏡では緊張で竹の節状の運動が見え、リラックスすると運動が消えます ⇒ 「大腸通過遅延型」の一部に相当すると考えられます。痛みを感じる人はストレスによる「便秘型IBS」になります


3. 腸管形態異常便秘: 運動不足でお腹が痛い便秘になるタイプです。これまで「ねじれ腸」「落下腸」としてご報告した「便秘型IBS」の一部です。(便秘型IBSは慢性便秘症に含まれます)

立ち上がると大腸全体が骨盤内に落ち込んで折りたたまれます。腸が動いても便が出ないため腹痛が起こすストレスの関与が薄い「便秘型IBS」になります。大腸の動きに問題がないことが多いため ⇒ 「大腸通過時間正常型」に相当すると考えられます


4. 弛緩性便秘: ほとんどは長期間連用した刺激性下剤のため腸管神経叢が不可逆な障害を受けて大腸が動かなくなり、便が出せなくなることで大腸が長く、太くなります



大腸に便が充満して拡張しています。大腸神経叢の障害で腸管運動が障害されているため ⇒ 「大腸通過遅延型」に相当すると考えられます。 弛緩性便秘は海外では刺激性下剤が長期連用されることがなくなったため2006年の機能性腸障害のバイブル「RomeIII」によると海外ではほとんど存在しなくなったとされています。

画像から見える便秘の病態分類を新しい便秘の病態分類に当てはめると

@ 大腸通過正常型:「ねじれ腸や落下腸」によるストレスの関与が薄い腸管形態異常便秘
A 大腸通過遅延型:痙攣性便秘やストレスによる便秘型IBS、刺激性下剤の長期連用による弛緩性便秘
B 便排出障害型:直腸性便秘や直腸瘤、骨盤底筋協調運動障害などの肛門科疾患

のようになると考えられます

−画像検査からみた便秘の病態分類への対処方法−

1. 直腸性便秘:

 「若い女性のトイレの我慢」などで良く知られる便秘です。
 当院を受診する乳幼児の便秘の90%以上を占め、小児でも40%程度を占めます。
 乳幼児は先天的なおしりの形、小児では入学など生活変化がきっかけになるようです。
 寝たきりや高齢者ではトイレに行きにくいことからの我慢で起きるようです。

 病態は直腸に便塊が残って知覚低下・直腸反射がなくなる状態なので、直腸の便を浣腸でリセットして食後数分の
 排便習慣をつけると数週間で回復します。
 特に乳幼児でおしりの痛みからの排便忌避が問題になるので、便を出しやすい排便姿勢指導が重要になります。

 便が固くなって出にくい場合に限りオリゴ糖やマグネシウム製剤を投与しますが、直腸反射の消失という病態から
 しても刺激性下剤は不要です。

2. 痙攣性便秘:

 身体的・精神的ストレスで便回数が少なくなる「体質」です。
 「旅行中出ないが帰ると出る」「平日は出ないが休日出る」のが特徴で、便が出ない期間が7−10日程度出ないのは
 珍しくなく、数か月間1回も排便がない場合もあります。

 ストレスがかかった状態になると内視鏡で提示したように部分的に痙攣して竹の節のようになって便が移動しなくなる
 ため水分が吸収されて便が固く小さくなり兎糞状になります。
 便が兎糞状になっているため便の量が少ないのも特徴で、1か月間出ていなくてもお腹の中に便が少ししかないことが
 多いです。

 このタイプの方は排便回数が少なくても出すときにするっと出れば問題はありません。

 ただ、「ねじれ腸」や「落下腸」を持っている方に合併すると「回数は少なくてもよいのだが、出すのに苦労する」という
 状況になります。
 便回数を心配せず、出しやすくするために、水分摂取・ラジオ体操などのエクササイズを行い、だめならマグネシウムや
 オリゴ糖の浸透圧下剤、それでだめならルビプロストンやリナクロチドなどの新規便秘薬を要します。
 固くなった便が詰まって出にくい場合は刺激性下剤や浣腸を週1‐2回使ってリセットすることは有効です。

3. 腸管形態異常便秘:

 「ねじれ腸」「落下腸」でご紹介してきた便秘で、運動不足で便秘する「体質」です。
 大腸が動いても大腸のねじれに便が引っかかって出ないため、腹痛があることが多いです。
 不用意に刺激性下剤を使用するとひどい腹痛で失神される方もいらっしゃいます。

 便が通りやすくすればよいので、適切な水分摂取とエクササイズ・マッサージが有効です。

 特に問題になるのが「痙攣性便秘」に「ねじれ腸・落下腸」が合併した状態で、便を軟らかくするのにマグネシウムや
 オリゴ糖だけでは不十分なことが多く、ルビプロストンやリナクロチドといった新規便秘薬が必要になることが多いです。

4. 弛緩性便秘:

 その多くは刺激性下剤(ピコスルファート・ビサコジル・センナ・大黄・アロエなど)の長期連用による腸管神経叢の
 不可逆な障害が原因とされます。
 刺激性下剤の長期連用が行われなくなったことで海外ではほぼなくなったとされています。

 1−3の便秘の原因の対処を行い、大腸の回復を待つのが治療です。
 刺激性下剤なしでは排便ができなくなっていることも多いので、週2回程度の刺激性下剤を内服して、それ以外の日は
 大腸を休ませます。
 回復期間は刺激性下剤の内服期間の長さが関係し、数か月から数年かかることもあります。
 ただ90代でも刺激性下剤がいらなくなった方を経験しており、時間はかかっても刺激性下剤なしで排便できるように
 なるようです。

−慢性便秘症診療ガイドラインのキモ−

・毎日出なくてもすっきり出ていれば便秘ではない。 回数自体は週3回出ていればよい。

・刺激性下剤は大腸のリセットをする有用で重要な薬だが、長期間連用するのは治りにくい「弛緩性便秘」の原因となる。 短期間もしくは屯用での使用が推奨される。

参考資料−画像検査からみた便秘の病態−

   ●筆者の大腸とのなれそめ

 筆者は大腸癌検診として約6千人の注腸造影、2万人の大腸内視鏡を施行して大腸の腫瘍・炎症と共に腸管の運動・形態に注目してきました。注腸造影では全例の腸管形態をスケッチし、腸を膨らませず・伸ばさず、腸の形態に合わせた挿入をする「大腸にやさしい」無麻酔大腸鏡挿入法「浸水法(Mizukami T. Dig Endosc 2007; 19: 43-48.)」を開発しました。本法は合理的で容易な方法として国内外で使用され、従来法との比較で苦痛が少ない事、挿入時間の短縮が図れる事をスタンフォード大学からご報告いただいております(C W. Leung. Endoscopy 2010; 42(7): 557-563)。


注腸造影での腸管形態スケッチ S状結腸(左)下行結腸下部(右)にねじれがある

 「浸水法」での大腸内視鏡は無麻酔で行われます。検査中は音楽を聴きながら患者様とお話しながら和やかな雰囲気で過ぎていきます。お話の内容は大腸の検査だけに当然「排便に関したもの」になりがちです。 患者様との会話でわかった排便状況と大腸内視鏡で観察される腸管運動から、検査自体で緊張した心理的ストレスで下痢や便秘を引き起こす腸管運動異常が観察される事を発見し報告しました(消化器心身医学2009 16(1) P91-97)。


下痢型IBSで観察される鎮痙剤で抑制されない腸管蠕動

この状態では検査の緊張から腸管の蠕動で肛門からガスや水が吹き出ます、鎮痙剤や患者さんの意思で(腸管蠕動による)ガスを止めることはできません。内視鏡は手を離すと腸の蠕動で排泄されます。ちなみにリラックスしたり、麻酔で意識がなくなると停止します。 怖い時に人間は目を閉じますが、目を閉じるだけでも1‐2分間で腸の動きは消失します


痙攣性便秘や便秘型IBSの一部で観察される拡張した腸管と収縮輪

腸管は膨らんだ部位と収縮・弛緩を繰り返す収縮輪でソーセージ様になります。内視鏡は収縮輪を一つ一つ通過する必要があり大変困難です。リラクセーション効果のある閉眼をすると1‐2分で腸管の収縮輪は解消します。

   ●「ねじれた腸管」との出会い

 そして過敏性腸症候群の中に大腸内視鏡で腸管運動異常が観察されない「心理的ストレスが関与しない」過敏性腸症候群が存在し、それらの方は下痢や便秘の原因となる心理的ストレスを自覚していないことを発見して報告しました(消化器心身医学 2010 17(1)33-39)(Intestinal Research 2017: 15(2): 236-243)。
 「浸水法」は水面から腸管の位置関係を把握し、腸管のらせん構造を把握して捻って挿入するため検査時に腸管形態がわかります。腸管運動異常が観察されない「心理的ストレスが関与しない」過敏性腸症候群では教科書的な腸管形態と異なる、「ねじれた腸管」を持つことが明らかになりました。以前、注腸造影でスケッチしていた腸管形態は実は意味があるものだったのです。


 下行結腸上部の捻じれ(矢印)と口側大腸の拡張
原因不明の腸閉塞を2回起こした混合型過敏性腸症候群患者(便秘)のCTによる腸管立体像。

 「ねじれた腸管」の方は「教科書的腸管」の方に比べると内視鏡を盲腸まで送り込むのは内視鏡医の立場からすると非常に大変です。具体的には「教科書的腸管」の人が2分程度で盲腸に到達するのに対し、「ねじれた腸管」の方では10分以上かかることは普通です。(JDDW2013発表)「目」が付いている大腸鏡でも盲腸に到達するのに5倍の時間がかかる(5倍の労力がかかる)とすれば、「ねじれた腸管」が便の出にくい一因になると考えても矛盾はないかもしれません。

   ●日本人の大腸の特殊性「ねじれた腸管」

  6000人の腸管形態をスケッチし、教科書と違う「ねじれた腸管」があまりにも多いことには気づいていましたが、人類共通の困難部位「S状結腸」を解決したはずの「浸水法」を用いて研修医を指導するときに問題になったのは、下行結腸以降の腸管の「ねじれ」でした。 

「浸水法」で研修医は難しかったはずのS状結腸を短期間で容易に通過できるようになるのですが、そのため逆にクローズアップされたのは下行結腸以降が実は難しいと言う事でした。 

疑問を明らかにしたかった筆者は慶應義塾大学解剖学教室の今西准教授と30体の献体を解剖して腸管形態を確認することにしました。 

献体で腸管形態を調べれば調べるほど湧いてきた疑問は「誰が教科書の腸管形態を決めたんだ!」ということでした。それほど腸の形は個人個人バラバラで、教科書通りといってよさそうな人は5名のみでした。 

 その謎は2011年にハイデルベルグに客員教授として出張して判明しました。 

「浸水法」は腸管のねじれに合わせてひねって挿入するため、S状結腸のねじれで起こる腸閉塞「S状結腸軸捻転症」の治療に非常に適しています。そのことをハイデルベルグ大学で講演したところ、みなキョトーンとしています。不思議に思って講演の後で聞いてみると「S状結腸軸捻転症」はドイツではほぼ存在しない病気だと言う事が判明しました。 

 ドイツ滞在期間に100人の大腸内視鏡を行い、ハイデルベルグ大学の放射線科、消化器科の教授と話したところ、彼らは「何言ってんだ、ドイツ人の腸は教科書通りに決まっているだろう」と言って、注腸写真やハイドロコロンMRI画像を見せてくれました。本当に教科書通りでした。 

 そして事実、ドイツ人の大腸内視鏡は非常に簡単でみな3分程度で盲腸まで到達し、日本人のような盲腸まで10分もかかる難しい人はほとんどいませんでした。

「教科書の腸管形態」は欧米人のものだったのです。日本人と違ってドイツ人の大腸内視鏡は非常に容易で、「浸水法」でS状結腸を解決すると検査は終わったも同然で、「最初に「浸水法」のランダマイズドスタディを発表してくれたのが海外からだった」という理由がわかりました。 

 日本人の腸は「教科書の腸管形態」と異なっている方が非常に多く、「ねじれた腸管」のゆえに検査も海外に比べて困難だという事のようです。

   ●便秘・過敏性腸症候群と「ねじれた腸管」の関係

 大腸内視鏡で観察される腸管運動や腸管形態を説明する前に排便状況などを聞くと過敏性腸症候群とともに便秘も腸管形態と大きく関連している事がわかってきました。 
 すなわち「ねじれた腸管」を持つ人は女性に多く、便秘であることが多く、便秘のきっかけとしてスポーツの中断・結婚(女性)・退職(特に男性)など運動量低下を伴うものが多いことがわかりました。

       ちなみに「ねじれた腸管」は通常の内視鏡画像からもわかります。 

下行結腸上部の捻れと細まり

 ねじれた部位は狭くなっています。便が固ければ狭いところをなかなか通過できず、便を押し出そうとする腸の収縮で腹痛を引き起こします。検査中、便通障害の原因となっている捻れの部位では内視鏡通過時にも患者様は便秘の時と類似した腹痛・違和感を自覚します。便が腸の捻じれに引っ掛かるのと同様に内視鏡も腸の捻じれに引っ掛かるので通過が困難です。 

 便秘がひどく、長い間続くと腸が膨らみ・伸びてしまうとともに、「第2の脳」ともいわれる神経の塊である大腸は便が詰まることで腸閉塞になる危険を感知して水分の吸収を抑制して下痢便となります。この現象は大腸癌で腸閉塞になった場合やS状結腸軸捻転症という大腸の捻転での腸閉塞を起こした場合の腸管内容が下痢便であることと一致します。 

   また非常に興味深いことに「教科書的腸管形態」を持つ方達に便通状況を聞いてみると、彼らは便秘を経験したことがない、もしくはめったなことでは便秘を経験することはないのです。 

   つまり「ねじれた腸管」を持つ方が、生活の変化・運動量の低下・食事の変化などこれまで言われてきた便秘の原因をきっかけに「腹痛を伴う便秘」を発症するということです。

   ●「ねじれた腸管」とのよりよい付き合い方

         それでは「ねじれた腸管による便秘」はどのようにすればよくなるのでしょうか? 
         それには「ねじれた腸管による便秘」になるきっかけが何であったかを知ることが大きなヒントになります。 
       運動量の低下から「ねじれた腸管による便秘」になることは前述したとおりですが、特に多いのが@テニス、Aダンス、Bゴルフなどをやめた場合です。他に野球やラクロスなどもありますがジョギングやウォーキングはほとんど聞かれません。つまり「体を捻る運動」をやめると「ねじれた腸管による便秘」が起こりやすいのではないかということです。 
       これは体を捻る運動が「ねじれた腸管による便秘」を改善しうる可能性を示します。 

       もう一つはねじれた腸管」に大腸内視鏡を挿入するときに我々が使用する補助手段を応用することです。 
       前述のとおり「ねじれた腸管」での大腸内視鏡挿入は内視鏡医としては非常に大変です。容易にする方法として我々は患者様自身による「自己腹部圧迫」を応用しています。内視鏡が通過しやすいように腸の位置を容易に補正できます。 
       これはすなわち自己腹部圧迫が内視鏡を通過させやすくするように、便をも通過しやすくさせることが可能だと言う事です。 

       これらの「体を捻るストレッチ」と「自己腹部圧迫によるマッサージ」は「ねじれた腸管による」便秘や過敏性腸症候群に非常に有効です。 
 
      ただ、ここで注意しなくてはいけない大原則がいくつか存在します。 
      @顔形と違って腸の形は外から見えず、他人の腸の状態を経験する事が出来ないという事。 
      A生まれつき便秘だった方を除き、排便状況に何らかの変化があって初めて異常を自覚し、
     その症状も感じ方も個人差があると言う事。 

      B腹痛や便秘で発症する大腸癌や炎症性腸疾患も有るという事。 
      大腸癌検診をされていない方は医療機関で大腸検査を施行していただく必要があります。 
       Cねじれた腸管であったとしても、全員が便通障害になるわけではないという事。運動や生活習慣、食生活などから「ねじれた腸管」とうまく付き合って生活している場合があります。 

       「腹痛がない便秘」の場合は「ねじれた腸管」が原因ではなく、「直腸性便秘」や「弛緩性便秘」など腸管運動が低下していることが多いので、従来言われている食生活や生活習慣の改善、排便姿勢の工夫など腸管運動を回復させる治療が重要です。

   ●「ねじれた腸」とうまく付き合っている人たち


 上の腸を持つ方はS状結腸が反転してねじれている60代の男性です。拡大写真でS状結腸がねじれて細くなっているのが確認されます。内視鏡検査はとても大変でした。 

 ところが普段の状況を伺うと便秘ではないとのこと。念の為に普段の生活を伺うとびっくりしました。毎日腹筋を200回、ジョギングを5kmしていたのです。 

 ちなみにこの話には後日談があります。内視鏡検査の時にポリープが見つかり治療をしたため1週間安静にしていただいたところ、ひどい便秘になったと驚いて受診されました。 

 安静期間が終わり、運動を再開したところ便秘も解消しました。スポーツマンはねじれた腸管とうまく付き合っていたのです。

   ●便秘といって侮るなかれ

  便秘自体は大腸(結腸)癌のリスクにならないということは国立がんセンター多目的コホート研究(JPHC研究)から報告されています(Otani T et al. Ann Epidemiol. 2006; 16(12): 888-94.)。 
   ところが便秘の治療というと軽く考えられて一般に刺激性下剤を連用される傾向にあります。これまで言われているように刺激性下剤を長期間常用すると下剤に耐性を生じ(下剤が効かなくなり)、腸管粘膜細胞を傷害して大腸粘膜が黒くなる「大腸メラノーシス」になります。

 そして刺激性下剤を長期服用した患者からは大腸腫瘍(腺腫,癌)が増加する(Siegers CP.Gut 1993;34(8):1099-101) との海外報告、週に2回以上下剤を内服する群では内服しない群に比して大腸癌のリスクが2.75倍になることが東北大学の大規模前向きコホート 研究 (European Journal of Cancer 2004 Constipation, laxative use and risk of colorectal cancer: The Miyagi Cohort Study.)報告があります。


当院で発見された長期間の刺激性下剤内服による大腸メラノーシス(左)と同患者の大腸癌(右)
注:この場合の「大腸メラノーシス」は通称で皮膚のメラノーシスと違って色素の原因はメラニンではないため「偽メラノーシス」とも言われます。黒くなっている原因は刺激性下剤で粘膜細胞が傷害された痕跡、「リポフスチン沈着」であるため、皮膚のメラノーシスと違って下剤を止めて1年程度すると色素は消失します。 


        センナを長期間毎日連用した30代女性の大腸、30代にして大腸腺腫もある(左)
        センナを減量して2年後、著しく改善している(右)

       刺激性下剤を使ったからといってすぐ大腸癌になるわけではありません。

       

        刺激性下剤は例えるならば「強心剤」のようなものです。心臓が弱った方に強心剤を使うと一時的には
     心機能が回復しますが、連用すると却って寿命を縮めます。
        刺激性下剤も同様で、検査の前に腸を空にしたり、リフレッシュさせるために使うには非常に有用な薬
     ですが、連用すると却って大腸を疲弊させ効果がなくなり腸管神経叢のダメージから弛緩性便秘となって
     腸が動かなくなってしまいます。 

      食事や生活習慣を改善させて無理なく排便させる、薬を使用する場合は適正量を適切な方法で
      使用する。それぞれの便秘の原因に対する適切な治療選択が重要と考えます。

   「腹痛がある便秘」「腹痛がない便秘」
 最初に記したように「腹痛がある便秘」の「腹痛」は腸の動きを示しているので、刺激性下剤は不要なことが多く、エクササイズやマッサージで速やかに回復します。

  「腹痛がない便秘」は「直腸性便秘」や「弛緩性便秘」など腸が動いていない便秘なので、まずそれらへの対処が必要で、腸の動きが回復するには病悩期間に応じた期間(特に高齢で)が必要でエクササイズやマッサージはさほど効果を示しません。 

  ご自身の便秘の原因を突き止めて刺激性下剤に頼らない「ご自身の腸との正しい付き合い方」を見つけましょう。

   ●「ねじれ腸」と「落下腸」
     「ねじれ腸」「落下腸」など腸管形態異常が起こす症状・病気はまだ医学書に掲載されていないため、一般病院の消化器内科医が評価することは困難ですが、実は通常の大腸内視鏡検査でも「ねじれた腸管」を判断する方法があります。
 
   内視鏡を担当してくれた医師に「大腸検査が難しかったか?・時間がかかったか?」を聞いてみることです。筆者の場合、無症状の人に比べて腸管形態異常の方は2倍以上の時間を要しています。また無麻酔で大腸鏡を施行している場合は、腸管がねじれた(便が引っかかりやすい)部位で痛みを感じます。 

   便秘や過敏性腸症候群の原因が「ねじれた腸管」による場合、これらを参考にねじれた部位をマッサージ、ストレッチをすることで症状を改善することが可能です。 


治療を経験された患者様からの貴重な体験談を頂いております。
http://www.kurihama-med.jp/endoscope/taikendan.html 是非ご一読、ご参考になさって下さい。

 症例の蓄積によりレントゲンのみでも腸管形態をすることができるようになりました。 

必要な方では大腸鏡と同日に施行するCTコロノグラフィーでわかりやすく提示できます。 

     「ご自身の腸」を知ってご自身の腸とのよい付き合い方を見つけましょう。 


           検査で異常がないものの排便障害に苦しんでいる方、 
          特に従来の薬の効果が薄かった方のご受診をお待ちしております。
           (IBS・便秘外来 水上健 月曜 金曜 8:30−11:00受付)

初診は予約が必要です。 
これまで医療機関を受診されている方は検査結果を持参して頂けると効率よく診察できます。 

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歳以上の方は身体疾患を考慮する必要があるため、紹介状をお願いいたします。
20歳未満の方、学業や仕事に支障が出ている方は早く診察しますのでお伝えください

 


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